ファミコン世代のみなさん、こんにちは。
1989年の夏、テレビから流れてきたあのCMとキャッチコピーを覚えていますか?
「エンディングまで、泣くんじゃない。」
当時、小学3年生か4年生だった私は、この言葉に強く惹かれました。
ドラクエやFFのような剣と魔法の世界ではなく、バットとTシャツの少年が、僕たちの住む現代(アメリカ)を旅するRPG『MOTHER』。
今回は、ゲーム音楽の枠を超え、ついには日本の小学校の教科書にも載ってしまった名曲、「Eight Melodies(エイトメロディーズ)」をご紹介します。
なぜこの曲は、ファミコンのピコピコ音でありながら、私たちの涙腺をこれほどまでに刺激するのか。
そこには、糸井重里氏が仕掛けた「愛の物語」と、シンプルさを極めた音楽の魔法がありました。
| 基本データ | 内容 |
|---|---|
| ゲームタイトル | MOTHER |
| 発売年 | 1989年 |
| 機種 | ファミコン (FC) |
| 作曲者 | 鈴木慶一 / 田中宏和 |
| 曲名 | Eight Melodies (エイトメロディーズ) |
Eight Melodiesを聴いてみよう
まずは、優しくてどこか懐かしい、あのメロディをお聴きください。
※出典:[Eight Melodies (MOTHER)]
音楽の教科書に載った伝説のゲーム音楽
この曲を語る上で欠かせないのが、「1992年の音楽の教科書(小学6年生用)に掲載された」という事実です。
当時、ゲームといえば「勉強の邪魔」「目が悪くなる」と大人たちからは敬遠されがちな存在でした。
そんな時代に、文部省(当時)検定済みの教科書に「ゲームの曲」が載るなんて、前代未聞の快挙でした。
私の学校ではありませんでしたが、実際に音楽の授業でこの曲をリコーダーで吹いた世代もいます。
先生が「きれいな曲でしょう」と紹介すると、男子たちが興奮して「これMOTHERの曲だ!」と叫んだ……なんてエピソードも残っています。
それは、ゲーム音楽が単なるBGMではなく、「子供たちの心に残る良質な音楽」として社会に認められた瞬間でもありました。
剣でも魔法でもなく「歌」で世界を救う
この曲は、ただの主題歌ではありません。
ゲーム中では、世界各地に散らばった8つのフレーズを集めることが冒険の目的であり、最大の武器となります。
衝撃的だったのは、ラスボス「ギーグ」との戦いです。
圧倒的な力を持つ宇宙人に対し、こちらの攻撃は全く通用しません。
そこで私たちが選んだコマンドは、「たたかう」ではなく「うたう」でした。
旅を通じて完成させた『Eight Melodies』を歌うこと。
実はこの曲、ギーグを育てた地球人の女性「マリア」が、幼い彼に聴かせていた子守唄だったのです。
歌うたびに苦しみ、攻撃の手を緩めるギーグ。
それはダメージを与えているのではなく、彼の中に眠る「愛された記憶」を呼び覚ましていたから。
「憎しみ」を「愛(思い出)」で浄化して世界を救う。
小学生だった私にとって、この展開はあまりにも切なく、そして衝撃的でした。
なぜこれほどまでに優しく響くのか?
音楽を担当したのは、ムーンライダーズの鈴木慶一氏と任天堂の田中宏和氏。
糸井重里氏からのオーダーは「誰にでも歌える、賛美歌のような曲」だったそうです。
ファミコンの音源は非常にシンプルで素朴です。
しかし、この曲に関しては、その「素朴さ」が逆にプラスに働いています。
余計な装飾がないからこそ、まるで古いオルゴールや、遠くから聞こえる教会の鐘のように、聴く人の心の奥底にある「懐かしさ」を直接揺さぶってくるのです。
「エンディングまで、泣くんじゃない。」
当時の私はこの約束を守ろうと必死でしたが、ギーグ戦でこの曲が流れ、エンディングでスタッフロールを見送る頃には、もうボロボロに泣いていました。
大人になった今聴いても、当時の部屋の匂いや、ブラウン管テレビの熱まで思い出して、やっぱり泣いてしまいます。
※出典:[CM MOTHER マザー Famicom (NES)]
まとめ
今回は、MOTHERの魂とも言える『Eight Melodies』を紹介しました。
- 教科書にも採用された、普遍的で美しいメロディ
- 「歌う」ことが攻撃になる、常識破りのラストバトル
- 子守唄に込められた、切ない親子の愛
RPGといえば「魔王を倒してハッピーエンド」が当たり前だった時代に、「倒すことの痛み」や「愛の強さ」を教えてくれたこの作品。
みなさんは、8つのメロディをすべて集めた時のことを覚えていますか?
動物園やサボテン、ピアノ……。「こんなところにあったのか!」という発見の思い出など、ぜひ思い出してください。
