ファミコン世代のみなさん、こんにちは。
今回は、もしかするとゲーム史上最も「テンションが上がる」と同時に「手が震える」曲かもしれません。
1988年、日本中を熱狂させた『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』。
その最深部で待ち受ける大魔王ゾーマとの決戦BGM、「勇者の挑戦」です。
多くのランキングで「80年代を代表する神曲」として選ばれ続けるこの曲。
なぜ私たちは、大人になった今でもこのイントロを聴くだけで胸が熱くなるのでしょうか?
そこには、すぎやまこういち先生が仕掛けた「絶望と希望」のドラマと、ファミコンというハードの限界を超えた技術が隠されていました。
| 基本データ | 内容 |
|---|---|
| ゲームタイトル | ドラゴンクエストIII そして伝説へ… |
| 発売年 | 1988年 |
| 機種 | ファミコン (FC) |
| 作曲者 | すぎやまこういち |
| 曲名 | 勇者の挑戦 (Fighting Spirits) |
ゾーマ戦のBGM『勇者の挑戦』を聴いてみよう
まずは、ロト伝説の最後を飾る決戦の音楽をお聴きください。
※出典:[ドラゴンクエスト3 勇者の挑戦 FC版]
小学生の私を震え上がらせた「闇の衣」と「凍える吹雪」
当時、小学2年生か3年生だった私にとって、ゾーマはまさしく「絶望」そのものでした。
たどり着くだけでもボロボロなのに、「ひかりのたま」を使うのを忘れて挑み、何をやってもダメージが通らないあの不気味な色をしたゾーマ。
そして、画面全体が真っ白になる「こごえるふぶき」のエフェクトと効果音。
この『勇者の挑戦』は、そんな極限状態の中で流れます。
イントロの重苦しい和音は、まさにゾーマの威圧感そのもの。「滅びこそ我が喜び」と嘲笑う大魔王の姿が目に浮かびます。
しかし、曲が進むにつれてメロディは力強く、疾走感あふれるものへと変わっていきます。
全滅して教会に戻される恐怖と戦いながら、それでも「負けないぞ!」とコントローラーを握りしめさせてくれたのは、間違いなくこの曲の持つパワーでした。
「勇者の挑戦」に隠されたロトシリーズの絆
この曲が「神曲」と呼ばれる最大の理由は、その構成に隠された「ロトシリーズの集大成」というメッセージにあります。
よく聴いてみると、この曲には過去作のフレーズが織り込まれていることに気づきます。
- 『ドラゴンクエストI』のフィールド曲「広野を行く」
- 『ドラゴンクエストII』のフィールド曲「遥かなる旅路」
これらのメロディが、ゾーマに立ち向かう勇者の旋律としてアレンジされているのです。
つまり、この曲は単なる「ボスのテーマ」ではありません。
「勇者ロトの血を引く者たちが積み重ねてきた歴史そのもの」が、大魔王への対抗手段として武器になっているのです。
曲名が「ゾーマのテーマ」ではなく、『勇者の挑戦』である理由もここにあります。
絶望的な大魔王に対し、過去と未来、全ての希望を背負って挑む。そんなドラマが音楽だけで表現されているなんて、すぎやま先生の凄さに改めて驚かされます。
なぜファミコン版が至高なのか?すぎやまこういち氏の「3音の魔術」
リメイク版(SFCやオーケストラ)の豪華なサウンドも素晴らしいですが、往年のファンの間では「やっぱりファミコン版の音が一番怖いし、燃える」という声が根強くあります。
その理由は、ファミコン特有の「音の硬さ」と「疾走感」にあります。
- 高速アルペジオの技術
ファミコンは同時に出せる音が少ないため、メインの音以外で和音を出すのが困難です。そこで、高速で「ピロピロピロ……」と音を切り替えることで、人間の耳には「重厚な和音が鳴っている」と錯覚させる技術(擬似多声)が使われています。これが独特の緊張感を生んでいます。 - ベースがリズムを刻む
通常ドラムなどが担当するリズムパートを、ベース音(三角波)が「ドドッド ドドッド」と細かく刻むことで代用しています。これにより、低音が唸るような迫力と、心臓の鼓動のような焦燥感が生まれています。 - リメイク版とのテンポの違い
実はSFC版などは、豪華になった分テンポが少し遅く設定されています。ファミコン版のあの「前のめりなスピード感」こそが、死闘を演じる私たちの心情と完全にシンクロしていたのかもしれません。
まとめ
今回は、ドラクエ3のラストバトル曲『勇者の挑戦』を紹介しました。
- 絶望(ゾーマ)と希望(勇者)が交差するドラマチックな構成
- 過去作のメロディを取り入れた、ロト三部作の集大成
- ファミコン版独自の、硬質で疾走感のあるサウンド
大人になってから聴き直すと、「あぁ、ここで1と2の曲が入っているんだ」と新たな発見があり、涙腺が緩むこともあります。
みなさんは、ゾーマ戦で誰が生き残っていましたか?
賢者の石を誰に持たせるかで揉めた記憶や、うっかり「ベホマ」をゾーマにかけてしまった失敗談など、当時の思い出があればぜひ心の中で振り返ってみてください。
